君の世界に触れさせて
 想像を絶する攻撃力だった。


 僕に向けて言われたわけではないのに、僕の心は抉られる。


 これを実際に言われた古賀の心の傷は、きっと深すぎるだろう。


「そしたら依澄、狂ったように練習するようになっちゃって。あんなヤツらに負けてられないって。私でも止められなかった」


 古賀がどんなことでも真剣に取り組むことを知っているから、その姿を想像するのは容易だった。


 ただ、氷野が止めてしまうほどの努力は、褒められたものではないだろう。


 それほどまでに練習にのめり込むのは、美談にしてはならない。


 そんな状況になるまで追い込んだ人たちに、怒りが芽生えてくる。


「去年の夏、中学最後の試合でシュートをしようとしたとき、依澄は倒れたの。練習のしすぎで足を痛めてたみたいで、その瞬間に限界がきた。でも、他のヤツらにはそんなの関係なくて、依澄はただただ攻められた」


 話を聞いているだけの僕でさえ怒りを覚えるのだから、氷野が怒りを顕にするのも、当然の話だ。


 それにしても、最後の最後まで、古賀は環境に恵まれなかったのか。


 そんなの、地獄でしかないじゃないか。


 氷野はそのときのことを鮮明に思い出してしまったのか、瞳に怒りが滲んでいった。
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