君の世界に触れさせて
 そんな弱虫な僕の背中を押してくれたのが、他でもない、古賀だ。


 古賀がいてくれたから、僕は今、こうして写真を撮れている。


 だから、古賀にも背中を押してくれる誰かが、必要なんだと思う。


「夏川栄治が、依澄を引っ張り上げてくれるんでしょ」


 氷野はため息混じりに言い、僕に背を向ける。


「依澄、昇降口の近くにある外階段に居るから。今度こそ、言葉を間違えたら許さない」


 そして氷野は僕から離れていく。


 最後まで氷野は、僕を敵視しているような態度だった。


 だけど、あんなふうに言ってくれたということは、少しは信用してくれたのかもしれない。


 そんなことを思いながら氷野の背中を見送っていると、試合終了の笛が鳴った。


「……しまった」


 僕のカメラには、ほとんど今の試合の写真が残っていなかった。


 試合を頑張った人たちには申しわけないと思いつつ、僕はその場を離れる。
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