偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 普段通りで全く意識している気配はない。どうやら恥ずかしがったり戸惑っているのは花穂だけのようだ。

 彼のあっさりした態度で肩の力が抜けた。

(そうだよね。私が意識し過ぎなんだよ)

 そして余計な心配をしては、右往左往している。こんな落ち着きの無さを響一が知ったら驚かれるか、呆れられそうだ。

 花穂は簡単に部屋を整えてから、私室に引き上げた。

 六畳の洋室は、広々使いたかったので、必要最低限の家具を厳選した。

 花穂は壁際のシングルベッドに腰を下ろし、それからごろんと仰向けになり白い天井を見上げた。

 まだ見慣れない景色に、引っ越して来たのだとしみじみ実感する。

 目を閉じると今日の出来事が蘇った。

(楽しかったな……)

 実家を守る為の気が進まない結婚だったはずだったのに、こんなに満たされた気持ちになれるんだなんて、自分は幸運だと思う。

(響一さんと結婚出来てよかった)

 そんなことを考えながら、花穂はいつの間にか眠りに落ちていた。
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