偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
【明日、かかり付け医に来て貰う】
簡単な返信をして、スマホをローテーブルの上に置こうとした響一はふとその手を止めた。
以前祖父が広斗に放った言葉がふいに蘇ったのだ。
『なんだその態度は。お前は響一よりひとつ年上だと言うのに、いつまでも落ち着かずにフラフラしおって、心配になるのは当然だろう!』
(広斗に対して特にきつくなるのは、心配でたまらないからなんだろうな)
三年前、広斗には婚約者がいた。
友人の紹介で知り合い意気投合したというよくある馴れ初めだが、ふたりの関係は傍から見ても羨ましいと思うほど良好だった。
しかし交際一年で突然破局。
そうなってしまった経緯に響一も少なからず関わっている。
だから広斗が冷めた目をして、結婚に興味がないと言う姿を見るたび、罪悪感がこみ上げて来る。
まだ本当の夫婦とは言えないまでも、響一は愛する人を妻にした。広斗にも幸せになって欲しいと思う。
烏滸がましい考えだと分かっているが、それでも決して消えない気持だった。