偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 母はまだ本調子ではないので、しばらくすると部屋に引き上げたが、父は次々酒を飲み上機嫌に大きな声で響一に話しかける。

「花穂はしっかりやっていますか?」

「もちろんです。祖父とも上手くやってくれていて、彼女のおかげで家が明るくなりました。いつも感謝しているんですよ」

「そうですか! それはよかった、花穂は頼りないところがあるので、六条家で上手くやっていけるかどうか私も家内も心配していたんですよ」

 父は豪快に笑い、あっという間に空にしたグラスに酒を注ぐ。

 飲みすぎはしゃぎすぎと思ったが、箕浦が言うには、父は新しい仕事に就いてから深酒を辞めて規則正しく過ごしているのだとか。

 父なりに生活を整えようと頑張っているようだ。今日はひさしぶりに羽を伸ばしているのだろう。

(響一さんが困っていたらフォローすればいいかな)

 そう思い様子を見ていたが、意外に彼も父と楽しそうに話しているので、花穂は箕浦と
近況報告をしながら料理をつまんでいた。

 しばらくすると、父が「おーい」と大きな声を上げた。どうやら花穂を呼んでいるようだ。
< 107 / 214 >

この作品をシェア

pagetop