偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 花穂と響一の場合は、少しずつ関係を深めたのがよい結果になったと思っている。昨夜のキスでもいっぱいいっぱいだった花穂が、初めから一緒の寝室でとなったら緊張して眠れなかったと思う。

「それでどんな部屋にするのか決めたの?」

「あ、まだ迷ってて。シングルベッドを並べるのとダブルベッドに変更するのか、どっちがいいのかな」

「私だったらシングルかな。悩むならシングルをぴったり並べたら?」

「あ、それがいいかも」

 自分のスペースを確保しながらも寄り添う感じが、花穂と響一の関係にちょうどいいような気がして、伊那の提案に満足した。

食器を運んでいると、キッチンの窓に強い風がふきつけガタガタ音を鳴らした。

「今日は随分風が強いね。天気が荒れそうだし、みんな寄り道をしないでまっすぐ帰ってるのかな」

 伊那が窓の方を見ながら呟く。

「うん。最近では珍しいくらいお客様が来ないよね」

「まあ、こんな日もあるか」

「暇だし、この辺の棚を整頓しておこうか」

 いつもは手が回らないところはこんな日に片付けるに限る。

 しかし伊那は今日はのんびりすると決めたようで、動こうとしない。
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