偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

「そこは上手く聞くんだよ。この前響一さんが飲みに行ってるところを見た人がいるんだ
けど、その日仕事だったよね?とかもっともらしいストーリーをつくって」

「そんな演技しても見抜かれそうだよ、響一さん勘が鋭そうだし、演じる自信が全くない」

 それに嘘を吐かれて傷ついているのに、自分が嘘を吐くのは駄目だろう。

「でも聞かないと解決しないじゃない」

「うん。だから結局自分で消化するしかないんだよね」

 とは言ってもそれが難しいのだけれど。無理やり納得しようとしても彼との間に溝をつくってしまうだけな気がするし。

「私だったら聞くかなあ……一度誤魔化されただけで、その後は嘘はなく仲良くしてるんでしょう?」

「うん。でも私がそう思っているだけかもしれないし。響一さん最近ますます仕事が忙しくなったみたいで毎日帰宅が遅いの。先週は急な休日出勤だったし」

 そのせいで模様替えの予定が延期になってしまった。

「仕事か~同じ会社でもない限り、どれくらい多忙なのかなんて知りようがないものね」

伊那の言う通りだった。けれど以前は響一の話すスケジュールを疑いなく信じ彼の予定を把握しているつもりになっていた。

 たった一度の嘘でここまで不信感をこじらせてしまうなんて。
< 152 / 214 >

この作品をシェア

pagetop