偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
ただそれでも響一への好意は変化していない。むしろ日に日に好きになっている。だからこそ、百合香とのことは嘘を言わないで欲しかった。
「でも伊那がいう通りうじうじしていても仕方ないよね。気持ちを切り替えるか、はっきり聞いてみるか決心しなくちゃ」
暗いムードをいつまでも漂わせていたら、周囲の人にも迷惑だ。
「その方がひとりで悩んでいるより健全だよ」
「そうだね、伊那に愚痴ったらすっきりした。ありがとう」
「いいって」
伊那は気が済んだようで席を立ちキッチンに向かう。花穂も開店準備に取り掛かった。
午後四時に仕事を終えた花穂は、帰宅するとすぐにキッチンに入り料理を始めた。
響一が好きな煮物や焼き魚に味噌汁。時間があるので丁寧につくる。ひと息ついたところで、普段は静かな母屋の方が騒がしいことに気が付いた。
(どうしたのかな)
気になったので外に出て様子を窺う。すると庭の先に見える母屋の廊下に祖父の補佐をしている使用人の姿を見つけた。彼はたしか片瀬という名前だったはず。
「こんばんは、片瀬さん」
「あ、花穂さん」
「でも伊那がいう通りうじうじしていても仕方ないよね。気持ちを切り替えるか、はっきり聞いてみるか決心しなくちゃ」
暗いムードをいつまでも漂わせていたら、周囲の人にも迷惑だ。
「その方がひとりで悩んでいるより健全だよ」
「そうだね、伊那に愚痴ったらすっきりした。ありがとう」
「いいって」
伊那は気が済んだようで席を立ちキッチンに向かう。花穂も開店準備に取り掛かった。
午後四時に仕事を終えた花穂は、帰宅するとすぐにキッチンに入り料理を始めた。
響一が好きな煮物や焼き魚に味噌汁。時間があるので丁寧につくる。ひと息ついたところで、普段は静かな母屋の方が騒がしいことに気が付いた。
(どうしたのかな)
気になったので外に出て様子を窺う。すると庭の先に見える母屋の廊下に祖父の補佐をしている使用人の姿を見つけた。彼はたしか片瀬という名前だったはず。
「こんばんは、片瀬さん」
「あ、花穂さん」