偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
部屋に戻ると丁度のタイミングでスマホが鳴った。響一からだ。
「はい」
騒めきと共に響一の声が聞こえてくる。
『花穂、急な仕事が入って帰りが遅くなりそうなんだ。俺のことは待っていなくていいから、先に休んでいてくれるか?』
「え……そうなんだ。分かりました」
久し振りにゆっくり響一と夕食を取れるとはりきって料理をしていただけにがっかりした。
とは言え仕事なら仕方がない。
『カフェの仕事、今日から早上りになったのに、ごめんな』
響一の申し訳無さそうな声が聞こえて来た。
(響一さんも、意識してくれていたのかな)
彼が花穂のスケジュールを把握し考えていてくれたことが嬉しくて、沈んでいた気持ちが少し浮上する。
「大丈夫。十二時くらいまでは起きてるね」
少しだけでも話せたらいいなと思った。
『……でも無理はしなくていいからな。疲れたら俺のことは気にせず休んで』
相変らず彼は優しいし、いつだって花穂をとても気遣ってくれている。
「うん、響一さんも忙しいのかもしれないけど無理しないでね」
『ありがとう……ごめん、もう行かないと』
「あ……分かった。仕事頑張ってね」
『ああ、じゃあ後で』
響一は早口でそう言い通話を切った。