偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「家庭の事情で不本意な見合いをすると聞いたんだ。城崎さんが居ないところでプラベートを聞く結果になって申し訳なかった」
「いえそれは大丈夫です。どうしても隠したいという程の話ではありませんから」
生活費の為に結婚を考えているなんて、響一に知られたくなかった。でも彼が見合い相手として現れた今となっては、そんなことはどうでもよかった。
「俺も今、家の事情で結婚を急かされているところだから、急な見合い話に困惑している城崎さんの話が他人事とは思えなかったんだ」
「六条さんも?……政略結婚とかですか?」
日本でも屈指の大企業六条グループの後継者の彼なら、そういった話がありそうだ。
「いや、相手に政略的なものは求めていない。ただ祖父が孫の結婚を見届けたがっていてね。今年八十五歳なんだけど、相当焦っていて顔を合わす度にうるさく言われている」
かなり急かされているのか、溜息混じりに語る響一は、あまり見たことがない困り顔だった。
「そんな事情が有ったんですね」
(六条さんは結婚したくないのかな?)
彼なら結婚相手なんてよりどりみどりで、その気になればいくらでも相手が居そうなの
に。
(それなのに憂鬱そうにしているのは、独身に未練があるから?)