偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「今まで仕事中心で過ごして来たが、さっき言った理由でのんびりしている訳にはいかなくなったんだ。かと言って結婚相手を条件だけで選ぶことは出来ない」

「そういうことなんですね」

 響一の事情はだいたい分かった。とにかく結婚を急がなくてはならないが、現在恋人も気になる相手もいないため困っているということだ。

 ただそれに花穂がどう関係するのかは謎だけれど。

 早く聞きたい気持ちを抑えて響一の説明に耳を傾ける。

「どうしようかと迷っているときに頭に浮かんだのが城崎さんだった」

「えっ、私ですか?」

 思いがけない発言に戸惑う花穂に、響一が迷いなく頷く。

「結婚したらこの先ずっと一緒に生きることになるだろ。相手は側に居て心地よい人がいいと思った」

「それは、確かに」

 花穂は同感だと頷いた。

 彼が言う通り、政略結婚でも見合い結婚でも、穏やかに和やかに過ごせる相手がいいだろう。

「俺にとって城崎さんがそんな存在なんだ。アリビオで俺が落ち着いて過ごせるように気を遣ってくれていただろう? そういった優しさが嬉しかった。それに君と話すと楽しいし癒されるんだ」

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