偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 響一が立ち止まり改まった様子で花穂を見た。彼の顔からは笑顔が消えて代わりに真剣さが表れている。

「は、はい」

 突然雰囲気が変わった彼の様子に戸惑いながら、花穂も足を止める。

(何を言われるんだろう……)

「俺と結婚して欲しい」

「えっ?」

 緊張する中、信じられない言葉が耳に届き、花穂は大きな声を上げてしまった。

「なんで?」

「言っただろ? 結婚するなら城崎さんがいいと思った。俺たちは趣味も合うから結婚しても上手くやっていけると思う」

「で、でも……」

「城崎さんはどう思ってる? 正直な気持ちを教えてくれないか?」

「どう、とは?」

「俺では結婚相手に不足?」

「まさか!」

 つい思い切り否定してしまった。

 不足なんてあるはずがない。釣り合っていないとしたら確実に花穂の方だ。

「よかった」

 響一はほっとしたように微笑む。まるで振られるのを恐れていたかのような顔。花穂に受け入れられて喜んでいるようだ。

(そ、そんなことあるはずないじゃない!)

 花穂は俯き目を閉じた。とにかく一度冷静にならなくては。

 頭の中で、今聞いた話を整理する。
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