偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「あの、情けない話なんですが、私の実家は今経済的に困っています。今回のお見合い相手は、私の家への援助を約束してくれていたのです」
非情に言い辛い内容だったが、避けて通れない問題だ。
口にするのにかなり躊躇(ためら)ったが、響一は「ああ知ってるよ」と平然と頷き、とくに問題視している様子はない。
「……つまり私の結婚はただのお見合いではなくて、支援の代わりなんです。ですから相手を変える訳には」
「その辺も心配いらない。城崎家への支援は俺がきっちりやるから」
「え……六条さんが?」
「ああ。城崎さんの実家だからな。その場限りのフォローではなく、長期的な視点で支援していくつもりだから心配しないで。それからカフェの夢も応援する」
ドクンと鼓動が跳ねた。
「私は今の仕事を辞めなくてもいいんですか?」
「職業選択は当然城崎さんの自由だ」
「でも、それでは私ばかり好都合ですよね?」
対して響一の方は金銭的損失が大きい。
花穂と結婚しても響一にマイナスばかりではないか。
「いいんだ。俺にもメリットがあるからね」
「メリットですか?」
そんなものが本当にあるのだろうか。思いつく限りではないけれど。