偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 細やかな気配りとスマートで自然な振舞いに、彼が経験豊富な大人の男性なのだと改めて感じる。

「花穂さんが、俺の申し出を受けてくれてよかったよ」

「あの、本当に私でよかったんですか? 響一さんならもっと条件のよい女性が他に居ると思うんですが」

 念を押すように問うと、彼は微笑む。それはどこか切なさを感じるもので、なぜなのか問おうしたがそれよりも早く響一が口を開いた。

「俺は君がいいんだ」

 真摯に訴えかけるようなその声に、ドキリと心臓が跳ねる。

「あ、ありがとうございます、光栄です」

「俺こそありがとう。末永くよろしく」

 繋いだままの彼の手に力がこもった。

「……はい。こちらこそよろしくお願いします」

 愛情からではない打算的な結婚を受け入れたはずだった。

 実家の窮状を救うため。そして自分自身の夢の為の割り切った関係。響一は『末永く』と言っていたが、状況により解消の可能性も十分にある。

 それなのに、繋いだ手から感じる温かさが花穂を温かく幸せな気持ちにする。

 きっと上手くいく。幸せな未来が待っている。そんな予感がして花穂は響一に微笑んだ。


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