偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
(でも響一さんは、私に素を見せている気がする。ラインなんてないみたいに、どんどん近づいて来て……)
それが嫌な訳ではない。ただ線引きが出来なくなりそうな自分が心配だ。
気を緩めたら実際の立場を忘れて、彼との時間を楽しんでしまいそうになる。
花穂はなんでもドライに割り切れる性格ではない。だからこそしっかり自分を戒めなくてはならないのに。
(夫になる人が魅力的過ぎるのも問題だわ……)
響一は花穂の為の服を真剣な表情で選んでいる。そんな姿に客の女性の見惚れるような眼差しが集まる。
彼は全く気付いていないようだが、完全にロックオンされている。
(本当に私なんか選ばなくても響一さんと結婚したい人なんていくらでもいそうだよね)
そんなことを考えながら見つめていると、響一がこちらに身体を向けた。
目が合うと、彼は笑顔になり近づいて来る。
「花穂さんに似合いそうなのがあった。試着してみないか?」
(こんなに素敵な人が、周りの目を気にせずに私の服を真剣に選んでいるなんて……)