偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「だったらいいじゃない。偽装とか契約だとか意識し過ぎないで、響一さんが気に入ったなら素直な気持ちを伝えたらいいんだよ」

「ちょっと待って、気持ちを伝えるってそこまで考えてる訳じゃないから」

「時期尚早ってこと? まあ結婚するんだし時間はいくらでもあるけど。ところで入籍と式はどうするの?」

「届けは来週にでも出す予定」

 祖父への挨拶が済んだので早々に婚姻届けを提出したいと響一が希望した。

「式は響一さんの仕事とかご家族の都合があるから、一年後を考えてるの」

 式場など各種手配は六条グループにブライダル関係の会社があるので、融通が利くらしい。

 日程と招待客が決まったらあとは好きにしていいと言われているが、今のところはまだ何も手を付けていない状態だ。

「そう。一年なんてすぐだろうね。花穂の花嫁姿楽しみにしてる」
「ありがとう」

 その頃、自分と響一の関係はどうなっているのだろうか。ふとそんな考えが頭に浮かんだ。


 十二月上旬の金曜日。

 花穂と響一はふたりで婚姻届けを提出した。

 これは本物の結婚ではない。その心構えは今も変わらないと言うのに、受理されたとき、響一の妻になったのだと改めて実感し胸に迫るものがあった。
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