偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「改めてよろしく」
区役所を出るとすぐに響一が言った。
優しい眼差しに、心が温かくなり花穂は微笑んだ。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
本心からの言葉だった。打算的な始まりだったふたりでも彼となら良い関係が築ける、根拠はないけれどそんな気がするのだ。
その後結婚指輪を注文していた宝飾店に行き、出来上がったマリッジリングを受け取った。
シンプルで上品なデザインのそれは花穂の細い指に馴染んだ。響一も自身の指にはめた指を感慨深そうに眺めている。
「これを受け取って欲しい」
宝飾店を出て響一の車に乗り込むと、彼がどこからか綺麗に包装された小さな箱を差し出した。
(プレゼント?)
花穂は首を傾げながら、彼の手から受け取る。
「開けてみて」
「はい」
戸惑いながらも花穂は美しい包装紙を丁寧に開いていく。
包装紙の中身はアクセサリーが入っていると思われるケースで、サイズ的に指輪のようだ。しかしマリッジリングは今受け取ったばかり。