偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 今更遅いかもしれないが、彼が気に入るものを用意したい。

「本当に気にしなくていいのに……でも、そうだな」

 響一が何か思いついたような明るい顔をした。花穂が期待して彼の言葉を待つ。

「夫婦になったことだし、これからは花穂って呼んでもいいか?」

「え……はい、もちろんですけど……そんなことでいいんですか?」

 拍子抜けする花穂に、響一は笑顔で頷く。

「ああ。そうだ俺のことも呼び捨てでいいから」

「いえそれはちょっと……」

「嫌なのか?」

 響一の笑顔にたちまち影が差す。

「違います! そうじゃなくて響一さんは年上だし元々お客様だったし、急に変えるのは難しいから」

 慌てて弁解すると、響一は納得した様子で頷く。

「分かった。無理強いはしない。でも少しずつでいいから距離を縮めていきたい。いずれは敬語もなしで。俺たちは夫婦になったんだから」

 そう言って魅惑的な眼差しを向けられると、落ち着きなく胸が高鳴る。

(でも、嬉しい)

 彼がどういう気持ちで言っているのかは分からない。それでも距離を縮めていきたいという気持ちは花穂も同じだ
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