偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 今のところ直接何か言われるようなことはないけれど、花穂に対して不満を持っている人もいるかもしれない。

「正月早々こんな話をしてごめんな」

「い、いえ、大丈夫ですよよ」

 不安が顔に出てしまったようで、響一に余計な気を遣わせてしまった。

「花穂は心配しなくて大丈夫だからな」

「はい。でも響一さんも無理しないでくださいね。期待が大きくて大変だとは思いますが、私でも愚痴を聞くくらいは出来ますから」

「花穂……」

 響一が勘当したように花穂を見つめる。

「ありがとう。心強いよ」

 実際花穂が出来ることは少ない。それでも辛いときに寄りそうことが出来たら。

(こんな気持ちになるのは、夫婦になったからなのかな)

 いつの間にか響一の問題をまるで自分のことのように受け止めて、それが当然だと感じているようになっていた。


「響一」

 玄関から室内に戻ろうと踵(きびす)を返したそのとき、背後から呼びかけられた。

 響一と花穂は同じタイミングで振り返る。

 そこに居たのは響一と同年代の男性だった。
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