偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

 すらりと長身で、くせがあるブラウンのミディアムヘアが第一印象を柔らかなものにしている。

 顔立ちはかなり整っており、目元にあるほくろのせいか表情が色っぽい。

「広斗、来たのか」

 響一が気安い様子で声をかけた。

(親族の方かな? どこかで見かけた気がするけど……)

 それがどこだったのかが思い出せないのがもどかしく、花穂はつい彼の顔をじっと見つめてしまう。

 すると視線に気づいたのか、男性が花穂に目を向けた。

「花穂、彼は六条広斗、俺の従兄だ」

 説明をしてくれた響一に頷き、広斗に向き直る。

「はじめまして、花穂と申します」

「はじめまして。あなたのことを響一から聞き、早く挨拶をしたいと思っていました」

 広斗が感じのよい笑みを浮かべる。紳士的な印象だ。低音の声音は響一に似ており、ふたりの血縁を感じさせる。

「響一さんから私の話を?」

(事情をどこまで話しているのかな)

 響一と広斗はかなり親しそうに見えるが、結婚の経緯についてまで打ち明ける程親しい関係かは、まだ分からない。

「響一とは同僚でもあるので、話を聞く機会が多いんですよ」

「広斗さんも本社勤務なんですね」

「ええ。響一は営業部で僕は海外部と仕事内容は違いますが」

 彼との会話で閃くものがあった。
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