偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「広斗がまた変なことを言ってもとり合わなくていいからな」
先ほど花穂を揶揄った件だ。
申し訳なさそうな響一に花穂は大丈夫だと微笑む。
「響一さんと広斗さんは仲がいいんですね」
「そうか? まあ年が近いからな。お互い親に放任されていたのもあって、長期休暇は大抵一緒に過ごしていたんだ」
「幼馴染でもあるんですね」
響一が頷く。
「覚えている限り一番古い友人が広斗だ」
「そうなんですね」
今は惚れ惚れするくらい素敵な大人の男性である響一たちも、小さな子供のころは元気に外を駆けまわったりしたのだろうか。
子供時代の響一を見たいと思った。
(今度、写真見せて貰おうかな)
そんなことを考えていると、上機嫌な祖父の声が耳に飛び込んできた。
「響一が花穂さんという素晴らしい妻を迎えた。次は広斗の番だな」
「はあ、またその話ですか」
広斗はうんざりしたように溜息を吐く。
(響一さんだけじゃなく、広斗さんも結婚を急かされてるのね)
それにしてもなかなか気まずい。ちらりと響一の様子を見ると、彼はこんな状況は慣れているのか涼しい顔だ。