偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 冷蔵庫は使用出来るようになっているが、中身はまだ空だ。

「響一さん、私、片付けが一段落したら、食材の買い物に行ってきますね」

「片付けで疲れてるだろ? 今日はなにか届けて貰おう」

 心配そうに言う響一に、花穂は首を横に振る。

「全然疲れていないから大丈夫です。それに新しいキッチンを早く使ってみたいから」

 キッチンは以前から憧れていたアイランドキッチンだ。しかも特注で調理台が広く、コンロも四個口になっている。

 今日はこのキッチンで料理を作り、ささやかな引っ越し祝いをしたい。母屋の祖父にも声をかけてみよう。

「それなら俺も行くよ」

「ひとりで大丈夫ですよ? 響一さんも片付けがあるんだから」

「荷物持ちは必要だろう? 何度も言ってるけど俺に遠慮しないで」

「……はい」

 響一の気遣いを受け止めるとふたりで家を出た。六条家の周辺は都内とは思えないような閑静な街並みが続く。

 街路樹や各家の樹々が自然を感じさせる。少し進むとお洒落なカフェや憩いの広場があり、ゆっくり散歩を楽しみたくなる環境だ。
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