偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「響一さん、お風呂空きました」

 入浴を終えた花穂は、リビングで寛いでいる響一に声をかけた。

 髪はドライヤーで乾かしてブラッシングをし、スキンケアもきちんとした。新しいパジャマはルームウエアとしておかしくないもので、だらしなさはないはずだ。

 それでもシャワー後の姿を見せるのはなんとなく緊張する。

(一緒に住むって無防備な姿をさらけ出すことになるんだよね)

 家族なんだから、そんなに気を遣わなくていいのかもしれない。響一とはだいぶ打ち解けているし、祖父と三人で囲む食卓はほのぼのして癒され家族だと感じた。

(でもふたりきりだと、一気に緊張感が増すんだよね)

 今、花穂は間違いなく彼を異性として意識してしまっている。

(響一さんはどう思っているのかな)

 彼は読んでいた本から視線を上げた。

「ありがとう。入ってくるよ」

 そう言ってソファからゆっくり立ち上がる。花穂と視線が重なると優しく微笑んだ。

「今日は疲れただろう? ゆっくり休んで」

「あ、はい」

「お休み」

「お休みなさい」

 響一はゆっくりした足取りで花穂の隣を通りバスルームに向かった。

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