旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜
「結鈴さんは、本当にお母様に似ているね。若い頃にそっくりだよ」
「そうですか? あ、嘉納さんは母の幼馴染で……その」
「そうだね。結鈴さんが思ってる通り、私は元々婚約者だったね。私たちは、仲違いとかではなく双方の親が喧嘩が原因なんだ。だから、亡くなる数日前までは文通をしていたんだ」
「そうだったんですか……仲良しだったんですね」
「まぁね。それに――」
何かを話し出すと言う時に天浬さんが戻ってきてしまって話は聞けなかった。でも、以前に天浬さんから簡単に教えてもらったことだろうと推測したが……少し聞きたかった気持ちもある。
「――美味しいかい? ティラミス」
「はいっ、とても美味しいです」
「結鈴さんのお母さんも好きだったよ、ティラミス。やっぱり親子だと好みも同じなんだね」
そうなんだ、お母さんもティラミス好きだったんだと思ったら嬉しかった。その後、私はここにきた目的である天浬さんの方の欄の下にある保証人という項目にサインしてもらった。
「あいつもサインしたんだな」
「はい。お願いして書いてもらいました。それが決まりですから」
「そうだな……まぁ、良かった。結鈴さん、これからも天浬のことよろしくお願いします」
「は、はい。こちらこそよろしくお願い致します」
レジデンスを出てまた車に乗ると、今度は私の叔父が宿泊しているらしいホテルに向かった。