旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜
***
「結鈴様。こちら試着していただいてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、もちろんよ」
私、岡本結鈴は石橋百貨店の次期社長で婚約者である石橋さんとの婚約パーティーを控えている。
そのために今はドレス選びをしている真っ最中だ……その相手は、今日も全く来ていないけど。そんなに結婚したくないなら別れてほしいわ。
ドレスの試着をしていると、スタッフさんがやってきて「結鈴様に会いたいとおっしゃっているお方がいるのですが」と私に伝えてきた。
「それはどなた?」
「嘉納様と言っていました。嘉納天浬様でございます」
「か、嘉納!? あなた嘉納って言ったわよね?」
スタッフは頷いて肯定する。嘉納って言ったら、旧財閥家でうちとは比べ物にはならないくらいの家柄だ。
それに天浬様は、最近嘉納銀行の頭取に就任された立派なお方だ。