旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜

「……結鈴、今日は話をしに来た。そして、君を迎えに来た」

「迎えって……また、契約妻が必要になったんですか？　まさか、好きな人とは一緒になるなんて認めないって言われたとか」

「……はい？　好きな人？　契約妻？」

「だって私は、後継者を産むための契約妻だったのでしょう？　本当は、好きな人がいてその人と一緒になれないから私と一度結婚して子供を作りその後は離婚の計画だったんじゃないんですか」


　また、契約妻になんてもう嫌だ。好きな人には好きな人がいて、その事実を知った私にはもう契約妻になるなんて出来ない。


「俺に、結鈴しか好きな人はいないが？　結婚して離婚？　ありえないだろう？　愛してるのになぜ離婚をする必要が」

「私が好き？　ありえないは私のセリフです。だって電話で『よしみ』さんって名前が聞こえたもの」

「よしみ？　あ、え？　よしみってまさか……あの電話を聞いてた！？」


　私は頷くと、急に顔を真っ赤にさせ「あんな電話聞こえてたなんて」と恥ずかしい恥ずかしいとブツブツ言い出した。


「『よしみ』というのは多分、大原(おおはら)堅美(よしみ)。俺の父、先代頭取の秘書の名前だ。俺のもう一人の父親みたいな存在で、俺が継いでからも秘書をしてくれていたんだけど退職する相談をされていたんだ。だけど、まだ先代頭取のやり方派と俺派と対立していてね。頭取の交代、理由を公表していなかったから。だから対立をさせないように対策を練っていて、必ず、一人で立てるように頑張り別れさせるからそれまでは辛抱してほしいと伝えたんだ……少し寂しくてね。寂しいのを悟られたくなくて強気で強めの言葉を言ってしまったんだ」


　えっ？じゃあ、勘違いだったってこと？
　でも、好きだとは言われてない気がするんだけど……