旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜



  ***


 翌朝、朝の空気を最後に感じようと浜辺に向かった。


「気持ちいいなぁ……これも最後か」


 空気は綺麗だし、潮風も気持ちがいい。


「また来ればいいよ。結鈴」



 一人きりだと思ったのに後ろから天浬さんがやってきた。私が抜け出したから心配したらしい……


「今度は、俺たちの子も一緒に来よう。またあのアップルパイが食べたいな」

「うん。私、会いたいな。だけど、やっぱり私をママだってわかんないかな」

「大丈夫。毎日、写真見せてるから結鈴のことママって分かる」


 写真見せててくれたんだ……嬉しい。分からなくても、時間を取り戻せるように頑張ろう。

 それに、あのアップルパイは美味しいから、食べられるようになったら一緒に食べたい。
 マスターもいい人だし会いたいし……

 そんなことを考えていると、天浬さんが近づいて膝をついて私の手を取ると手の甲にキスを落とした。

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