桜ふたたび 後編
玄関先まで迎えに出た澪の頬に、ルナは静かに頬を寄せた。風にでも吹かれていたのか、ひどく冷たい頬だった。
「突然でごめんなさい。伊織の墓参りに行ってきたから。迷惑だった?」
キッチンで珈琲を煎れながら、澪はついウキウキと爪先だって答えた。
「とんでもない。すごく嬉しいです。でも、ジェイは今、ニューヨークなんです」
こんな佳い日に彼の妹が訪ねてくれるなんて、何という偶然。
──実は、ジェイの赤ちゃんができました。あなたの甥っ子か姪っ子ですよ。
言葉が出かかって、慌てて口を押さえた。
最初に報せるのは、やはりジェイにしたい。
それに、少し元気がないと感じたのは、婚約者の墓参りだったからだ。まだ心の傷が癒えない彼女に、今は言うべきではない。
コーヒーをテーブルに置いて、ソファーに居住まいを正し、澪は改めて頭を下げた。
「この間は、ほんとうにありがとうございました」
半年前、ルナの助力がなければ、こうして最高の幸せを得ることはできなかった。
「日本にはいつまで?」
「これから空港へ」
澪はがっかりと肩を落とした。
そう簡単に会えるひとではないし、せっかく訪ねてくれたのに。
残念だけど、一人でも多くの子どもを救うために活動しているのだから、仕方がない。
「それじゃあ、空港までお見送りさせてください」
「いえ……」
と、言ったきり、ルナはコーヒーに手をつけることもなく黙りこくっている。
そのとき澪ははじめて、ルナの様子がいつもと違うことに気づいた。
「突然でごめんなさい。伊織の墓参りに行ってきたから。迷惑だった?」
キッチンで珈琲を煎れながら、澪はついウキウキと爪先だって答えた。
「とんでもない。すごく嬉しいです。でも、ジェイは今、ニューヨークなんです」
こんな佳い日に彼の妹が訪ねてくれるなんて、何という偶然。
──実は、ジェイの赤ちゃんができました。あなたの甥っ子か姪っ子ですよ。
言葉が出かかって、慌てて口を押さえた。
最初に報せるのは、やはりジェイにしたい。
それに、少し元気がないと感じたのは、婚約者の墓参りだったからだ。まだ心の傷が癒えない彼女に、今は言うべきではない。
コーヒーをテーブルに置いて、ソファーに居住まいを正し、澪は改めて頭を下げた。
「この間は、ほんとうにありがとうございました」
半年前、ルナの助力がなければ、こうして最高の幸せを得ることはできなかった。
「日本にはいつまで?」
「これから空港へ」
澪はがっかりと肩を落とした。
そう簡単に会えるひとではないし、せっかく訪ねてくれたのに。
残念だけど、一人でも多くの子どもを救うために活動しているのだから、仕方がない。
「それじゃあ、空港までお見送りさせてください」
「いえ……」
と、言ったきり、ルナはコーヒーに手をつけることもなく黙りこくっている。
そのとき澪ははじめて、ルナの様子がいつもと違うことに気づいた。