桜ふたたび 後編
Ⅶ カメオ
1、師走の出来事
「えええ!?」
素っ頓狂な澪の声に、ウエイトレスがトレイのコップを倒した。
街は華やかなクリスマスモード。赤レンガの駅舎もライトアップされ、クリスマスソングが流れるショコラティエの窓外には、シャンパンカラーに光り輝くイルミネーションの並木道が見える。
「そやからさ、違たんよ」
千世は、クリスマスバージョンにデコレートされたパフェを頬張りながら、事もなげに言う。
あれからふた月、澪自身にも辛いことがあって、千世にこちらから連絡するのも憚られていた。
そっちに行く用事があるからと、電話があったのは三日前。結論が出たのだと胸が苦しくなる思いをしていたら、千世は上機嫌でテーマパークのクッキーをお土産だとくれた。
「どうしてわかったの?」
「お義姉さんがな、赤ちゃんの血液型を調べてもらおうって言い出さはったん。脩平はRHマイナスのAB型、遺伝してるかもしれへんしって。彼女はO型で、何でかしらんけど、脩平も同じO型やと思い込んでたらしいわ」
話の続きを固唾を呑んで待っている勘の悪さに、千世は笑い出した。あんまり笑いすぎて、変なところへ入ったのか、ゴホゴホと咳き込んでいる。
「本当の父親はO型なんやろね。そやから生まれてくる赤ちゃんは100%O型やて彼女わかってたんや。ところがAB型とO型からはO型の子どもは絶対にできひん。お義姉さんの勘が当たって、彼女、ぜぇんぶ白状しやはった。同窓会で再会して、酔っ払ってホテルに泊まっただけやって脩平も言うてたし、産み月が合わへんからおかしいとは思うててん。男ってアホやな、ころりと騙されて」
「騙されたとかの問題じゃないよ」
澪は顔を真っ赤にして憤慨した。そのためにどれほど千世が傷ついたか。
素っ頓狂な澪の声に、ウエイトレスがトレイのコップを倒した。
街は華やかなクリスマスモード。赤レンガの駅舎もライトアップされ、クリスマスソングが流れるショコラティエの窓外には、シャンパンカラーに光り輝くイルミネーションの並木道が見える。
「そやからさ、違たんよ」
千世は、クリスマスバージョンにデコレートされたパフェを頬張りながら、事もなげに言う。
あれからふた月、澪自身にも辛いことがあって、千世にこちらから連絡するのも憚られていた。
そっちに行く用事があるからと、電話があったのは三日前。結論が出たのだと胸が苦しくなる思いをしていたら、千世は上機嫌でテーマパークのクッキーをお土産だとくれた。
「どうしてわかったの?」
「お義姉さんがな、赤ちゃんの血液型を調べてもらおうって言い出さはったん。脩平はRHマイナスのAB型、遺伝してるかもしれへんしって。彼女はO型で、何でかしらんけど、脩平も同じO型やと思い込んでたらしいわ」
話の続きを固唾を呑んで待っている勘の悪さに、千世は笑い出した。あんまり笑いすぎて、変なところへ入ったのか、ゴホゴホと咳き込んでいる。
「本当の父親はO型なんやろね。そやから生まれてくる赤ちゃんは100%O型やて彼女わかってたんや。ところがAB型とO型からはO型の子どもは絶対にできひん。お義姉さんの勘が当たって、彼女、ぜぇんぶ白状しやはった。同窓会で再会して、酔っ払ってホテルに泊まっただけやって脩平も言うてたし、産み月が合わへんからおかしいとは思うててん。男ってアホやな、ころりと騙されて」
「騙されたとかの問題じゃないよ」
澪は顔を真っ赤にして憤慨した。そのためにどれほど千世が傷ついたか。