桜ふたたび 後編
「メリークリスマス!」

〈寝ぼけてるな?〉

ジェイは電話口で呵々と笑った。

澪も笑いながら、つい涙声になった。

「雪が降ってるの」

〈こっちも降ってるよ〉

「砂漠にも雪が降るんですか?」

〈いや、今はパリにいるんだ〉

「パリ……」

カソリックにとって大切な聖なる夜。去年はジェノヴァでふたり過ごした。
今年は婚約者と一緒だろうか。想像したとたん、涙が零れた。

〈澪?〉

「……寂しい……」

唇から言葉が漏れた。

「早く……帰ってきて……」

子どものようなわがままを言って、ジェイを困らせるだけだとわかっているのに、堪えようとしても、次から次へと涙が溢れてしまう。テレビから流れる「きよしこの夜」が、嗚咽を消してくれるといいのだけれど。

〈澪、愛してる〉

ジェイは言った。

〈愛してる、愛してる、愛してる〉

囁きが連呼しているうちに大きくなって、澪は何だかおかしくなった。
澪は涙を払い、

「私も、ジェイを愛してます」

〈澪……、寂しくて気がおかしくなりそうなのは、私の方だ〉
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