桜ふたたび 後編
新居に唯一置かれたキングサイズベッドが、薄明かりのなかで微かな軋みを立てている。

「ぅん……」

眉間を皺め白い喉を反らせた澪は、にわかに瞼を見開いた。

「ま、ま、待って」

ジェイは恨めしげな目をして、逃れようとする澪を見下ろした。

「何?」

ジェイは苛々と額の汗を拭った。

最悪のタイミングで中断して、申し訳ないと思う。
それならさっさと言えばいいのに、なかなか女の口からは言いづらい。

「あ、あの……アレを……」

澪は赤面しながら枕元へ視線を這わした。

「もう必要ないだろう?」

「あ、でも……」

ジェイは面倒くさそうな表情を浮かべて、落ちた前髪をかき上げた。
それから澪の頬を両手で挟むと、額を寄せ真っ直ぐに目を見て言った。

「私はすぐにでも子どもが欲しいんだ」

「コドモ?」

一瞬にして澪は凍りついた。
< 15 / 271 >

この作品をシェア

pagetop