桜ふたたび 後編
「あなたが、他の人を抱いたりしたらって考えると、苦しくて……」

ジェイは唖然と彼女を見下ろした。

「そんなこと、あるわけがない」

ジェイは笑みを浮かべて否定したが、澪に瞳を覗かれまいとしたことが、まずかった。
案の定、澪の瞳に涙がさし浮かんだ。

「ジェラシーなんて……贅沢だって、わかっているんです。ジェイは男だし、若いし、健康だし、誰の所有物でもないんだって……。頭では理解しているのに、でも、ココロがダメなんです」

澪はジェイの前に正座すると、顔を赤らめそれでも真摯に瞳を見つめ、声を震わせ言った。

「愛がここにあれば、カラダは他のひとのものになってもいいなんて、どうしても割り切れない。だって、あなたのココロもカラダも全部、愛してるんだもの。あなたの声も視線も匂いも肌の温もりも、誰にも分けてあげたくない。わたしだけのものにしたいんです」

瞼に溜まった涙が大きな滴となって一粒落ちた。

ジェイは、放心した。自分でも呆れるほど、澪の素直な言葉に感動していた。

そう、いつも何か物足りなかったのは、彼女に欲心がないからだ。愛し合っているのに、愛を自分の掌中に独占しようとしない。いつかは終焉がくると達観しているようで、もどかしかった。

ジェイはそっと澪の唇に人差し指を押し当てた。

「嬉しいよ。そんなに上手にジェラシーを告白してくれて」

そして、澪の指輪にキスをして誓った。

「愛してる。未来永劫に、私の心も体も澪だけのものだ。神に誓う」
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