桜ふたたび 後編
『しかし、いくら美しいからと言って、3Dでしか観たことのない国に住もうなんて、ミロシュビッチも案外ロマンチストだな』

美しい珊瑚礁のビーチに、アロハシャツにショートパンツ、サングラスでふんぞり返っているミロシュビッチをイメージするだけで笑える。

『唐沢が巧妙に仕掛けた暗示誘導のおかげもあるでしょうけど、3Dにはサブリミナルが使われていたの』

『そんなものに効果があるのか?』

ジェイが口端で意味深に笑った。

『どんな映像が挿入されていたんだ?』

『KGBによって白熊が銃殺されるシーン。そのあと血みどろに引きずり回されて、無惨にも毛皮を剥がされて、内蔵を──』

もういいと手でリンを止め、

『ミロシュビッチもさぞかし悪夢にうなされただろうな』

ウィルは気持ち悪そうに肩を竦めた。 

『これで我々の復讐は成った。残るは塔に隠した姫様の救出か』

ウィルはリンにウインクをした。

ジェイは一瞬顔を綻ばせ、そして気を引き締めるように大きく息を吸った。

『では、最後の仕上げに入ろう』

『Yes,Sir.』
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