桜ふたたび 後編
澪は、少し遅れた母の日の花を注文し、自宅用の花を手に夕暮れのなか帰路についた。
この辺りはビル街で人通りも多く、治安はいい方だ。けれど──。
澪は足を止め、振り返った。
やはり今日も、しっかり距離を保って外国人女性に尾行されている。こちらが振り返っても身を隠すわけでもない。
澪が、悠斗や悠璃のトラブルにAXを疑ったのは、このためだった。
悠璃のことまで調べているとなると、実家も何か被害を被っているかもしれない。
悠斗に探りを入れてもらおうか、と考えていたときだった。
ふと強いハーブのような香りに、振り返るより早く、いきなり背後から右腕を背中にねじ上げられ、澪は反っくり返った。
花束がぐしゃりと踏みつぶされた音がした。
都会のど真ん中で危害を加えられることはない、相手は女性だからと油断していた。
一瞬の動作で完全にホールドされ、澪はビルの隙間へ引き摺り込まれていた。
街の死角を熟知しているのか、誰も気づかない。
喉を押さえられて声がだせない。
息ができず意識が薄れる。
この辺りはビル街で人通りも多く、治安はいい方だ。けれど──。
澪は足を止め、振り返った。
やはり今日も、しっかり距離を保って外国人女性に尾行されている。こちらが振り返っても身を隠すわけでもない。
澪が、悠斗や悠璃のトラブルにAXを疑ったのは、このためだった。
悠璃のことまで調べているとなると、実家も何か被害を被っているかもしれない。
悠斗に探りを入れてもらおうか、と考えていたときだった。
ふと強いハーブのような香りに、振り返るより早く、いきなり背後から右腕を背中にねじ上げられ、澪は反っくり返った。
花束がぐしゃりと踏みつぶされた音がした。
都会のど真ん中で危害を加えられることはない、相手は女性だからと油断していた。
一瞬の動作で完全にホールドされ、澪はビルの隙間へ引き摺り込まれていた。
街の死角を熟知しているのか、誰も気づかない。
喉を押さえられて声がだせない。
息ができず意識が薄れる。