桜ふたたび 後編
「準備は進んでる?」

ルナがドアから半分だけ顔を覗かせていた。

「きれいよ、澪」

面映そうに微笑む澪に、ルナは頬を寄せた。
そして肩に手を置いたまま、見惚れたように、

「こんなかわいい姉妹ができて、ジェイに感謝ね……」

少し湿り気を帯びているのは、叶わなかった夢を重ね合わせているのかもしれない。ブライズメイドドレスより、純白のドレスを身につけたかっただろう。本来なら、次にこのティアラを頭にいただくのは、彼女だった。

「そうだ、これを」

ルナはネックレスを外して、澪の首にかけた。
そのペンダントトップに見覚えがあった。一昨年のクリスマスミサでルナの薬指に見た、亡き婚約者から贈られたダイヤモンドだ。

「サムシングフォーと言って、幸せになるおまじない。新しいドレス、古いティアラ、借り物のアクセサリー、──ああ、ブルーが足りない」

綾乃が心得たように、

「ガーターベルトのリボンがブルーです」

よくやったとルナに背中を叩かれて、細身の綾乃は身をよじった。
本人は軽いつもりでも、彼女のスキンシップはパワフル過ぎる。ハグされて、澪も何度気を失いかけたことか。

ルナはもう一度澪の頬に祝福のキスを送った。

「幸せに」

「ありがとうございます」

窓の外で派手な爆竹音がして、エヴァの大きな声がした。カラが元気に吠えたてている。
何事かとロッジアから芝庭を見下ろしたルナが、笑いながら澪を手招いた。
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