桜ふたたび 後編
『本当に奴の犯行だと?』

『自信がないのか?』

『いや……、しかし奴の犯行なら、澪の命の保証はない』

ジェイの眉が微かに動いた。

『アランは、澪を殺せない』

『なぜそう言える?』

『愛する者を殺された哀しみは、犯人への殺意に変わる。今回彼は、私から報復されるリスクを身をもって知っただろうから』

『殺人教唆の噂が絶えない奴だぞ』

『彼のターゲットは私だ』

『それに失敗したから、今度は澪なんだろう?」

一年半前の襲撃事件は、ニコの活躍で失敗に終わった。
この犯行は事件の一月前に起こったクリスの事故が引き金で、おそらくアランが計画したものではないだろう。

彼のことだ、殺害するつもりなら、素人など使わない。
押収された銃は銃身内が錆びていて、命中率が悪い上に、下手をすれば銃身が破裂して犯人の命さえ危うい代物だった。

あの事件は、共謀者のフライングだ。だとしても、彼には千載一遇だった。
狂人に襲われた被害者から、悪徳非道な行いの制裁を受けた加害者へと蔑め、混乱の間隙を縫ってカールにクラッキングさせ、偽情報を流出させた。

動機は何か。
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