桜ふたたび 後編
同時刻、リールの小学校の正門前に、一台の車が停まっていた。

運転席にはレオ、助手席にはカール、おしゃべりしながら正門を出てくる子どもの顔を、目を皿にして確認している。

程なくカールが指さした。

《メル!》

レオは目を凝らした。
赤茶色の髪の少年が、友人と手を振り別れると、こちらに向かって歩いてくる。

カールは嬉しそうにそわそわと車を降りた。メルの背後に回り、まるで初恋の相手を前にはにかむ少年のように、もじもじと後を追う。

レオは防犯カメラの配置を再確認して、カールの後ろからメルに声をかけた。

《メル》

そばかすの少年が振り向いた。 

《あ、カールだ!》

メルは飛び跳ねるように引き返してきた。

《メル、メル》

カールはパンパンパンパンと手を叩いて、巨体を揺らした。その太股に少年はコアラのように抱きついた。

《リールに来てたの? いつ?》

レオはこの上ない善良な笑みでソフトハットを取った。
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