桜ふたたび 後編
〔やっぱり寝ているみたいですよ〕
病室は静まりかえっている。照明スイッチを入れたキアラは、目を剥いた。
〔いない!〕
室内は全て真っ白、隠れられる物入れどころか引き出しさえないのだ。
〔トイレじゃないですか?〕
キアラは乱暴にトイレのドアを開けた。澪の姿はない。
〔逃がしたわね〕
とんでもないとアイラはぶんぶんと首を振った。
特別室はカードキーがなければ内側からさえドアが開かない。窓ははめ殺しで面格子が付けられている。
ドアを振り返ったキアラははっとした。取っ手を持って力を加える。動くはずのないドアが静かにスライドした。
キアラは膝を着いて、どんな些細な異変も見逃すまいと、目と手で探った。
ドア枠のかみ合わせ部分に光るものがある。引き出して見ると、ダイヤモンドのペンダントトップだった。
きっとナースの隙を盗んで細工をしたのだ。睡眠薬などと油断させて、監視の目を緩めさせた。
この町の人間は、警察の必要もないほどのんきだから、日頃からオートロックが確実にかかったか確認するナースなど、一人もいないのだ。
〔くそ!〕
キアラは髪を膨らませて、病室を飛び出した。
病室は静まりかえっている。照明スイッチを入れたキアラは、目を剥いた。
〔いない!〕
室内は全て真っ白、隠れられる物入れどころか引き出しさえないのだ。
〔トイレじゃないですか?〕
キアラは乱暴にトイレのドアを開けた。澪の姿はない。
〔逃がしたわね〕
とんでもないとアイラはぶんぶんと首を振った。
特別室はカードキーがなければ内側からさえドアが開かない。窓ははめ殺しで面格子が付けられている。
ドアを振り返ったキアラははっとした。取っ手を持って力を加える。動くはずのないドアが静かにスライドした。
キアラは膝を着いて、どんな些細な異変も見逃すまいと、目と手で探った。
ドア枠のかみ合わせ部分に光るものがある。引き出して見ると、ダイヤモンドのペンダントトップだった。
きっとナースの隙を盗んで細工をしたのだ。睡眠薬などと油断させて、監視の目を緩めさせた。
この町の人間は、警察の必要もないほどのんきだから、日頃からオートロックが確実にかかったか確認するナースなど、一人もいないのだ。
〔くそ!〕
キアラは髪を膨らませて、病室を飛び出した。