桜ふたたび 後編
元パリ調査室のレオナルド・ジュガリーと、彼の二人の娘たちが、愉しそうにローテーブルを囲んでいる。

姉は八歳、妹は六歳、砂糖菓子のような金髪と青い瞳がピクスドールのように愛らしい。どちらも母親に似て美人になるだろう。

ウィルは頬を緩ませ、すぐレオに同情の目を向けた。
彼にも十五歳の娘がいる。前回の面談ではボーイフレンドを紹介され、無様なほど狼狽えた。
娘を溺愛するレオにも近い将来、同じショックが待ち受けている。

娘たちはレオの左右に分かれて床に座り、テーブルに肘立てた両手に頬を挟んで、父が切るカードを見つめている。

レオの向いのソファーには、キングサイズの黒人男が、丸めた背を左右に揺らしながら座っていた。

『ポーカーでもしているのだろう?』

配られたカードから、一人一枚、テーブルに裏返しに置いてゆく。三名が出し終わったところで、男が分厚い唇をぼそっと開く。少女たちはキラキラと瞳を輝かせ顔を見合うと、声を合わせ同時にカードを表に返す。
最後に父親がカードをひっくり返すと、娘たちは手を叩いて歓声を上げた。

テラスの視線に気づいて、レオが笑みを浮かべてやって来た。

サンクチュアリの中で最古参・最年長のレオは、ジェイが最も信頼を置く人物だ。
飄々として口数は少ないが、気配を消して自らをモブ化するという特技を活かし、潜入調査や尾行など、足を使って生の情報を収集してくる。

『凄いですよ』

ビブラードのかかった落ち着いた声が珍しく弾んでいる。

『何をしているの?』

『数字当てです』
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