桜ふたたび 後編
「何を怒っているんだ?」

「……」

「英会話のプライベートレッスンのこと? それともマダムの教室?」

鏡のなかの澪が恨みがましく睨んだ。

「厭ならやめてもいい。まずはチャレンジしないと、前には進まないだろう? さあ、機嫌直して」

ジェイはそっと澪の項に唇を落とした。一瞬、澪のからだが甘く震えた。

「ここでする?」

澪は目を瞑ったまま硬直している。
怒ってはいるけれど、誘惑には敵わない。昼間いいところで中断しているから、よけいに体が求めている。でもここでは恥ずかしいし、かと言って自分からベッドへ向かうのも癪に触る。
てなことを、頭の中でぐるぐると考えているのだろう。意地を張った姿もかわいらしい。

「しょうがないなぁ」

抱き上げようとすると、澪は観念したように立ち上がった。
ベッドに横たわった澪によしよしとほくそ笑み、いざ出陣と欣々然と体を被せようとしたとき、

「今日はだめ」

「え?」

思わぬ反撃を浴びせられ唖然とするジェイに、澪は毅然と背を向けた。
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