桜ふたたび 後編
「マダムのティータイムにご招待されてるの?」

「ティータイム?」

優子は呆れながら言った。

「あのね、金曜日は特別レッスンなの。出席できるのはマダムにご指名を受けた限られた方だけ。羨ましいわ、澪さん」

感心しているのは優子だけみたい。奥歯を噛みしめ苦々しい表情の茉莉花を忖度するように、董子と萌愛は互いに目配せをし合っている。

「澪さん、お仕事は?」

「いえ、こちらに引っ越して来たばかりなので」

「お住まいはどちら?」

「今は泉岳寺に」

董子は、次はあなたの番よと萌愛に視線を送った。

「どちらのご出身ですかぁ?」

「京都です」

「京都なら由緒正しいお家柄が多いですものね。元は華族様とか? それともお家元?」

董子が突っ込む。

「いいえ……」

「老舗のご商家かしら?」

「いいえ……」

面目なさそうな澪に、董子と萌愛は再び目を合わせた。
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