桜ふたたび 後編
「ずいぶんと買い込みましたね」
葵は捲るように持ち上げて、雑誌名を確かめている。どれもファッション雑誌で、何が正解かわからず、本屋に並んでいたものを手当たり次第買ってきたのだ。
「わたし、そういうことに疎いもので……」
「何か特別な予定でも?」
答えに興味があるのかないのか、見出しに気になるタイトルを見つけたようで、葵は一冊の雑誌を手にとってパラパラと捲り始めた。
「いいえ、おつき合いで……」
「ずいぶんと難しいおつき合いなんですね」
澪は苦笑した。
今まで澪は、ブームやトレンドに興味を持たなかった。ワードローブはオーソドックスで着回しができるものが中心。たまに千世が愛読しているファッション雑誌を眺めることはあったけど、目まぐるしく変わるモードにはついて行けない。
千世がいてくれたらとつくづく思う。今の澪には、買い物の相談をする友人もいない。
「今、フィニッシングスクールに通っているんです」
「どちらの?」
「エコ・ド・ヴィブレと言うんですけど」
「ああ、マダム・ネリィのサロン」
日本の最高学府を答えるようにサラリと言う。そんなに有名なのかと澪の方が驚いた。
「ご存じですか?」
葵は雑誌を閉じると、
「私も以前、通っていましたから」
我知らず残念な表情をしてしまい、澪は慌てて目を伏せた。
「今、あなたもお嬢様なのかと思いました?」
「あ、すみません……」
「私の父は元子爵の家柄で外務省の高官、母は某製薬会社創業者の一族です」
葵は捲るように持ち上げて、雑誌名を確かめている。どれもファッション雑誌で、何が正解かわからず、本屋に並んでいたものを手当たり次第買ってきたのだ。
「わたし、そういうことに疎いもので……」
「何か特別な予定でも?」
答えに興味があるのかないのか、見出しに気になるタイトルを見つけたようで、葵は一冊の雑誌を手にとってパラパラと捲り始めた。
「いいえ、おつき合いで……」
「ずいぶんと難しいおつき合いなんですね」
澪は苦笑した。
今まで澪は、ブームやトレンドに興味を持たなかった。ワードローブはオーソドックスで着回しができるものが中心。たまに千世が愛読しているファッション雑誌を眺めることはあったけど、目まぐるしく変わるモードにはついて行けない。
千世がいてくれたらとつくづく思う。今の澪には、買い物の相談をする友人もいない。
「今、フィニッシングスクールに通っているんです」
「どちらの?」
「エコ・ド・ヴィブレと言うんですけど」
「ああ、マダム・ネリィのサロン」
日本の最高学府を答えるようにサラリと言う。そんなに有名なのかと澪の方が驚いた。
「ご存じですか?」
葵は雑誌を閉じると、
「私も以前、通っていましたから」
我知らず残念な表情をしてしまい、澪は慌てて目を伏せた。
「今、あなたもお嬢様なのかと思いました?」
「あ、すみません……」
「私の父は元子爵の家柄で外務省の高官、母は某製薬会社創業者の一族です」