まじないの召喚師3
昼休憩が終わり、全校生徒がグラウンドに集められる。
数人サボってても気づかれないほどに、クラスも学年もごちゃ混ぜになっているのを、私は少し後方から眺めていた。
ぼっち仲間が一定の距離を空けて集団を囲む立ち位置。
ぼっちはぼっちゆえにぼっち同士で固まらない結果によるものだ。
なお、ぼっちが勝手にぼっちに対して仲間意識を抱くだけであり、彼らがどう思っているかは不明である。
ぼっち同士仲良くなれるんじゃないのかと疑うそこのあなた。
天然ぼっち、人工ぼっち、培養ぼっち、だいだらぼっち、自主ぼっち、ぼちぼちぼっち、えとせとらぼっち。
何が言いたいのかわからなくなってきたが、とにかく、ぼっちは奥が深いことをここに添えておく。
さて。
「キャッ! 火宮先輩だ!」
「初めてこんな近くで見た!」
「かっこよ!」
中央組のより中央。
火宮桜陰先輩は女子の取り巻きを多く持ち、相変わらず目立つ。
「……けっ、女子を侍らせやがって」
「……消えろイケメン」
「男から見てもカッコいい」
「お前実は女子だろ」
羨む目を向ける一部の男子や、逆に憧れの目を向ける一部の男子もいた。
「ふっ」
「キャーッ!!」
火宮先輩の不意の微笑みを直撃した女子が倒れていく。
アイドル並のファンサもお手のものだ。
うまく爽やかイケメンに擬態しているが、本性は鬼で大魔王の俺様なんだよなぁ。
目が合ってウインクを飛ばされたので、唾を吐きかけるジェスチャーをした。
ペッペッ。
こっちに構うな。
取り巻き女子の視線がくるではないか。
ほら、そこの厚化粧女子よ睨まないで。
ファンサの相手は私じゃありません。
前髪で顔を隠し、背中を向けて、背中を丸めて、早足で退散する。
『あいつら、先輩にべってりくっついて。………気に入らないなぁ』
いかにも、先輩の隣は私であるべきというようなツクヨミノミコト。
んなことになってたまるか。
火宮桜陰親衛隊女子集団の怖さを知らないのかな。
『あれくらい、私にかかれば一瞬で消し飛ばして……』
騒ぎを起こさないでください。
『騒ぎにする間もなく終わらせるよ』
いやほんとやめて。
俺様大魔王のために罪を犯さないで。
『………俺達の仕事は、火宮桜陰が注目を集めている裏で、補佐することだ』
数秒の沈黙の後。
『……………そっかぁ。そうだねぇ。先輩のお陰で動きやすくなってるし、隣に立つことだけが役に立つことじゃあないもんねぇ。…………うん、わかったよ』
スサノオノミコトの説得の成功に、私はほっと息をついたが。
『今回は、騙されてあげる』
にっこり。
と、効果音がつきそうな声色に、少々恐怖を覚えた。
いやね、騙すつもりは毛頭なくてですね。
その時、それとは別の寒気が、背筋を震わせた。