まじないの召喚師3



「能力が目覚めて1年も経ってない奴に向かってくって、プライドねぇのかよ」



「うっさい! この世界は年数とかかんけーないの!」



「………嬉々として年下ばかりに勝負しかけときながら、それを言うの?」



「でも確かに。俺らのリーダー様の実力、見ておきたいなぁ」



「柚珠は連戦になるな。なんなら俺が出よう」



「引っ込んでてよ筋肉達磨。ちょうどいいハンデでしょ」



ハンデじゃなくて、憂さ晴らしって言うんだよ。

私の実力をよく知る先輩に視線で訴える。

気づいた先輩は、心底楽しそうな笑みを浮かべて。



「だそうだ。月海、お望み通りやってやれ」



嬉々として売られた。


一瞬、先輩が味方してくれたと思った私が馬鹿だった。

不安なのは、私が先輩以外とまともに稽古したことがないということ。

相手は日夜、響を倒す為、実戦で腕を磨いているお方だ。

私のような一般に毛が生えたような初心者は、無事ではすまないだろう。



『私に変わりなよ。無傷で終わらせてあげるから』



それじゃあ私の訓練にならないでしょう。



『えー。痛い思いしたいの? そんな嗜好の持ち主だったの?』



んなわけねぇでしょ。

わかってて言わないでよ。


しかし、痛みなくして強くなれるかと問われれば、凡人な私がそんなわねないじゃん、てなことで。

かといって、負けは許されない。

さてどうしたものか。


棒立ちで考えていた私の腕ごと、蔦が腰に絡みつき、少し前まで響の立っていた位置に引き摺られた。


痛いて。

運ぶなら、もっも丁寧に運べ。

そして、開始位置まで私を運ぶ役目を果たした蔦は消えた。

この辺は公平であるらしい。

柚珠が見下すように顎を上げているのがわかる。

勝ちを確信しているようだ。



「双方構えろ」



審判役の常磐が片手をあげる。

先輩と雷地は常磐の一歩後ろで高みの見物。

と見せかけて、雷地は先輩の動きに気を配っている。

先輩が不正をしないよう監視のつもりか。

残念ながら無駄な労力ですよ。

あの極悪非道俺様大魔王は、私がボロボロになったとしても助けに入らない自信がある。


ヨモギ君も私に見向きもせず、マシロ君とお話ししている。

先輩の命令しか聞かない彼のことだ、回復術はあてにできない。


響は実験を再開するかと思ったが、私たちの方を見てくれている。

応援してくれているなんて、勘違いはすまい。

研究熱心な彼は、次なる柚珠との戦いの為データ集めをするのでしょう。


……四面楚歌じゃん。



「始め!」



常磐が上げた手を振り下ろした。


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