まじないの召喚師3
そんな私の視線を遮るように、先輩の顔が割り込む。
「これはチーム戦だ。襲撃者はあいつらに任せて、お前は目の前のことに集中な」
「ぅぐっ………」
顔がいい。
たとえ、にっこり笑顔に、落ちたら承知しねぇぞ、と書かれていたとしても。
何度見ても見慣れなくて、不意打ちをくらえばドキッとする。
ちくしょう、腹の立つ顔のくせに。
「ご主人様」
ヨモギ君の狐耳がピクピクと揺れた。
その時、玄関の方から爆音がした。
私たちの周囲を壁や家具の破片が流れていく。
「何っ!?」
「敵襲に決まってんだろ!」
「術が効かないからって、爆弾でも投げ込みやがったなぁ?」
「わっはっはっ! 神水流の結界も大したことないな!」
「………僕の結界は能力特化」
ヨモギ君の透明な結界越しに、家の門の前に立つ複数の人影が確認できた。
直前にヨモギ君が結界を張ってくれたから無事だけど、普通なら死んでるからね。
脳内のアナウンサーが、原因不明の爆発により、同居していた高校生の男女6名と、5歳くらいの少年2人の死亡が確認されました、と報道した。
実際は死んでないって。
と、頭を振って目の前の門扉に立つ複数の人影に意識を戻す。
「我々は、術師協会である」
彼らの先頭に立つループタイの黒スーツの男が代表で、印籠のように、カードを突きつけた。
協会って、なんか大きそうな団体のようだけど。
と、いう考えが顔に出ていたのか、先輩がこそっと教えてくれた。
「今度俺らが受ける試験の主催だよ」
なるほど。
「その協会が、なんの用かなぁ。試験の合格通知だと嬉しいんだけど」
雷地の挑発にも似た台詞にも、先頭の男は淡々と話す。
「警告である。今後、あの結界の使用を禁止する」
「結界って、幻影と罠の結界のことか?」
「左様。結界に触れた者が下水に流れることにより一般人の目に留まり、ニュースに取り上げられた。一般に広く知られることは、協会の活動に支障が出る」
人の流れる下水に、ニュースにも取り上げられた打ち上げ隕石。
「それって、ボクたちのせいじゃないよねー」
「………僕の研究成果が使用禁止……?」
「チッ。汚ねえマネしやがる」
「………どこの家の圧力?」
「陰湿担当は桃木野だろう。質実剛健、清廉潔白な浄土寺ならば、直接叩き潰す!」
「はぁ? ちょっと隠すのがうまいだけで、いい気にならないでよねっ。いまに化けの皮がはがれるんだからっ!」
「初日に次期当主直々に来た火宮と、分家に乗っ取られた神水流はどぉかなぁ?」
「雷地、テメェ喧嘩売ってやがんのか? 高く買うぜ」
「………僕も買う」
「表に出ろやコラ!」
みんながみんな、押し付け合っているようだけど、全部正解じゃないかな?
そこで、気づく。
ループタイの協会の男の後ろに大勢いた人たちが、私の家を囲むように陣取っているのだ。
全方位から見張るように、取り囲んで逃がさないように。
先輩達はお互いを牽制し合って、彼らの動きに気づいていない。
「よって、ここで資格剥奪とする!」
ループタイの号令に合わせて、周りの術師から一斉に投げ込まれた、投石。
いや、それから伸びる紐についた赤く小さな火は、爆弾か。
気づいた時には、私達は爆炎に包まれた。