まじないの召喚師3
ローテーブルを囲むように正座する次期当主と先輩にお茶を出し、私は先輩の斜め後ろに着座した。
「で、何しに来たんだ?」
お茶を一口含み、幾分か冷静になった先輩の本日二度目の質問に、答えたのは雷地だった。
「ここにいるみんなで合宿しようと思ってさ」
「合宿だぁ?」
「ほら、俺達、次の試験受けることになったしょ?」
試験とは、妖魔退治の試験のことだ。
神水流家で大立ち回りした際、当主と揉めた次期当主達が家を継ぐための条件として、次の試験での合格を突きつけられていた。
「老害どもの妨害で稽古場は使えなくされるし、練習相手も捕まらないしで、仕方なくこいつらに連絡取ったの。そしたらみんな同じで笑っちゃった」
「考えていることは同じ。試験にかこつけて俺たちを始末しようというのだろう」
目が笑っていない柚珠と、深刻そうに眉根を寄せる常磐。
「……僕のところは、分家に乗っ取られて刺客まで送られてきた。お陰で僕は家なき子」
淡々と言う響に柚珠がつっかかる。
「ダサ。なんでそんなになるまで気づかないの?」
「家を追い出された点では俺たちも同じだろう。つまり俺達も……」
「言うな常磐。五十歩百歩だ。試験か、刺客かの違いだけ」
雷地が首を横に振った。
「…………研究に夢中だったんだ」
たっぷり間をあけ、フフッと怪しく笑う響に背筋が寒くなる。
「うげ……。なんで命狙われて笑ってられるのさ」
「………返り討ちにしたから。お陰でいい実験ができてる」
「…………」
純粋に、怖っ、と思った。
他の皆も同意見らしく、それ以上の追及はしない。
隠し事は誰にだってある。
聞かなくてよい事だって、同様にある。
藪をつついて化け物を出す事はない。