再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
父親?


聞きなれない単語に混乱する。


「まあ、そうだったんですか! 失礼いたしました。お父様のお迎えは初めてですし、きっと悟己くん、喜びますよ。こちらです」


なんの疑いも持たずに案内しようとする先生に、焦って声をかけた。


「あ、あの、悟己が驚くと思うので……私が行きます。……惺さんは、そこで待っていてください」


話しかけながら横をすり抜け、室内に足を踏み入れる。

ドッドッと速すぎる心臓の音がうるさい。

先生は明るく挨拶をしてくださるが、いつものように対応できる余裕はない。

背中に突き刺さる視線が痛いけれど、大勢の人の目がある場所で私たちの事情や悟己をさらしたくない。

どのみち、会わせなければいけないなら、せめてほかの人の目がないところにしたい。


「ねえっ、すごくカッコイイお父さんね!」


「私、どこかで見た気がするんだけど……」


「え、有名人?」


「武居さんってシングルマザーよね? 再婚したの?」


保護者の方々の不思議そうな、噂をする声があちらこちらから届く。


ああ、もう、最悪だ。


絶対に後々、顔見知りの保護者の方や、先生方に尋ねられる。
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