再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「……顔をよく見せて」


「ママ、この人だあれ?」


無邪気に再度問いかけられ、返答に詰まる。

これまで父親とは一緒に住めないとしか話していなかった。

保育園で男性の保護者を見かけると「なんでパパは来てくれないの?」と何度も尋ねられた。

その問いの答えは、私もずっと探していた。


愛していた。


大好きだった。


だからこそ、一緒にはいられなかった。


「君の、パパだ……はじめまして」


心なしか、惺さんの声が震えている気がした。

彼が告げた言葉にひゅっと息を呑んだ。


「本当に!? 僕のパパなの?」


歓喜の声を上げる息子を黙って見つめる。


やめて、そんな言い方をしたら悟己が期待する。


なんで、自分の子だと言えるの? 


あなたの子どもを産んだなんて教えていないのに。


「惺さん!」


「ずっと……会いにこれずに悪かった」


「ママ、パパだよ! 嬉しい、やっと会えた。ママも会いたかったでしょ?」


真っ直ぐな視線は父親にそっくりだ。

惺さんに抱き上げられ、悟己はご機嫌だ。


「ママはパパが大好きなんだもんね」


突然の告白に頬が熱くなる。


動揺を隠しきれず、視線をうろうろと泳がせてしまう。
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