再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「……へえ、そうなのか?」


悟己の目を覗き込みながら確認する。


「うん、だって僕がパパの話を聞くとき、いつも言ってるよ」


「さ、悟己、それは……!」


慌てて止めようとするが、時すでに遅しだ。


「悟己、ほかにも色々教えてくれないか。さっきのお兄さんの話も聞きたいし、パパの家に行こう」


「やった、パパのお家で寝るの?」


「ああ、でもその前に必要なものを家から取りにいこう」


ふたりだけで会話と段取りがどんどん進んでいく。


「待って、そんな急に……仕事だって……」


「息子が最優先に決まっている。チャイルドシートを手配するから、先にタクシーで戻って荷造りをして」


てきぱきと指示されるが、うまく状況を理解できない。


なぜ、こんな事態になっているの?


彼の家に泊まるって、なに?


「逃げるなよ? 自宅や職場はすでに調べてある。もし逃げたら悟己は俺が引き取るぞ」


抱き上げた息子に聞かれないよう耳元でささやかれ、血の気が引く。

一番恐れていた事態を口にされ、足が震えた。


「悟己は私の息子よ……!」


「俺の子でもある」


「なんで……!」


「ママ? パパのところに行かないの?」


反論が、明るい声で遮られる。


「行くよ。これからの予定を話していたんだ」


眦を下げて息子に触れる指先はとても優しくて、胸がズキズキ傷んだ。
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