再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「ここって……どなたかの部屋?」


思わず声を漏らし、ぐるりと周囲を見回す。

大きな書架やどことなく華美な内装は、秘書課とは思えない。

机の上には書類が積まれていて、不躾に見てはいけないと視線を外すと、廊下側で話し声が聞こえてきた。

会議が終わったのだろうか。

壁に掛けられた木製の時計に視線を向けた途端、ノックもなしに突然、扉が開いた。

咄嗟に視線を戻し立ち上がると、華やかな容姿の長身の男性が部屋に入ってきた。

切れ長の二重に高い鼻梁、薄い唇が小さな顔に完璧な配置でおさまっている。

サイドがほんの少し長めの黒い髪は艶やかで、細身のスーツを颯爽と着こなしている。

長すぎる手足と小さな顔に見覚えがあり、思わず息を呑んだ。

私に気づいたのか、男性は形の良い眉をひそめた。

不機嫌そうな表情に慌てて下を向く。


「言っておくが、俺は社員と関係を持つつもりは一切ない。職場の風紀を乱す人間は厳しく罰する。能力がなければすぐに放り出す」


突如、上から降ってきた厳しい声に戸惑う。


「仕事のスケジュール管理と把握は任せるが、プライベートには干渉するな。業務以外の件で話しかけるのも禁止だ。蔵元の紹介とはいえ、丸ごと信用するつもりはない」


宗太先輩の名に、恐る恐る頭を上げると睨みつけるような視線にぶつかった。
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